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  • Writer's pictureTOMO SHIKANAI

NPB-MLB Posting and International Amateur Talent System

菊池雄星選手(27)が12月3日にNPB西武ライオンズからポスティングされるとの報道がありました。

ポスティングシステムというのはNPBとMLBのコミッショナー間で結ばれた契約に基づくもので,NPBチームリザーブ下の選手の移籍に関して定められたシステムです。リザーブ下の選手というのは9年の必要プロ経験年数を経ていないがゆえ国外フリーエージェントの資格を得ていない選手を言います。つまりチームがリザーブ(保有)している選手ですから, MLBのチームがその選手と契約するにはその選手ではなく保有チームと移籍の契約を締結しなければいけません。

保有チームは11月1日から12月5日までの間に選手をポストする必要がありMLB全チームは30日間交渉期間をもらえます。2018–2019オフシーズンに適用される新たなポスティングルールによれば,NPBの保有チームが取得するRelease Feeは,NPBチームが$20 millionまで設定できた過去のルールと異なり,MLBチームと選手の間で締結される契約上のGuaranteed Value(無条件にもらえる報酬額)やSinging Bonusの額によって決定されることになります。

具体的には,マイナー契約であればSigning Bonusの25%,メジャー契約であればGuaranteed Value最初の$25 million以下の額について20%,次の$25millionまでの金額について17.5%, $50millionを超える額については15%という風に選手の得られる報酬の額によって段階的にチームの得られる移籍金が決定されることになります。例えばGuaranteed Valueの額が$100 millionの場合には5million + 4.4 million + 7.5 million = 16.9 millionとなり,$150 millionの場合には5million + 4.4 million + 15.75 million = 25.15 millionとなります。


ではその基準となる選手の得るメジャー契約のGuaranteed Valueやマイナー契約の場合のSigning Bonusの額は両当事者で自由に決定できるのでしょうか。

ここで問題となるのが2017-2021 CBA Attachment 46に定められるInternational Amateur Talent Systemです。このルールによれば Rule 4 Draft(新人対象のドラフト)にかからない”International Player” ,すなわちアメリカ50州等以外に住所を有する選手等,と契約するに は原則この選手が“Foreign Professional”に該当しない限り,マイナー契約を締結しなければならず,かつInternational Bonus Pool 内の金額でしかSigning Bonusを約束できません。ここでいう“Foreign Professional”とは,25歳に達している6年以上のプロ経験年数を有する選手を言います。例えば,2018-2019シーズンMLBチームはそれぞれ$4.75millionから$5.75millionのプール資金内でのみ(また他のチームから最大で右初期プール資金額の75%まで追加で取得できます)International Playerとサインできます。

Signing Bonus以外のマイナー契約上オファーできる最初の年の報酬額はルール上ミニマムサラリーと決まっています(Major League Rule (“MLR”) 3(c)(1), (2)(B))。更に次年度からは他の新人と同じく3年のメジャーリーグサービスで仲裁する権限を得た上6年でフリーエージェントの権利を得ます。

逆にForeign Professionalに該当すれば実質フリーエージェントとして交渉できるチームの制限なくGuaranteed Value を含む契約内容を決定できます(MLR 4(e)(1))。ここで「実質」と書いた理由は,あくまでも選手はフリーエージェントではなく契約決定権を有するのはリザーブチームであり選手ではないからです。ただし事実上リザーブチームが選手の得る報酬額が多くなるようMLBチームを選ぶことになっているようです。


2017オフシーズンに大谷翔平選手がポストされた際, 大谷選手は右にいう25歳+6年というForeign Professionalの基準を満たしていませんでした。したがって,大谷選手が得られる上限金額は各チームに割り当てられたInternational Bonus Poolの金額(エンジェルスの$2.315 million)プラス(メジャーリーグ全試合Active Roster (25 man roster or ML disabled list)に載っていた場合には)$545,000となります(CBA Article VI (A)(1))。大谷選手がフリーエージェントの権利を得るのは最短で2023年オフシーズンとなりそうです。

ここでさらに問題になったのがファイターズの得るRelease Feeです。もし新たなポスティングルールが適用された場合にはファイターズが得られた金額は基本的に2.315 Million の25%しかもらえないわけです。ポスティングの時点でどこまで交渉が完結されていたかは定かではないですが,ファイターズが2016年まで有効であった旧ポスティングシステムを2017年オフシーズンまで延長させ少なくともRelease Fee 20 millionは確保したかったことは明らかです。結局ファイターズは旧システム延長の下20 millionを取得しました。


他方2018オフシーズンにポストされる菊池選手の場合には上記Foreign Professionalに該当しますので大谷選手のような心配はありません。したがって,菊池選手がMLBチームとメジャー契約をすることは制限されず,所属チームライオンズが取得するRelease Feeは新たなポスティングシステムの下決定されます。選手が取得するGuaranteedの金額が大きければ大きいほどRelease Feeも増大しMLBチームのトータルの支出が重ねて増えていくのですから,菊池選手が得られる金額が旧システムより増大するかといえば必ずしもそうではありません。ただし右のようにRelease Feeを押し上げるにはGuaranteed の押し上げが必要になるので今のシステムの下では所属チームの交渉利益と選手の交渉利益が一致し,その意味では新システムが選手にプラスに働きそうです。

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