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Writer's pictureTOMO SHIKANAI

Qualifying Offer

2018年11月12日月曜日ロサンゼルスドジャースのHyun-Jin Ryu選手がQualifying Offerを承諾しました。

Qualifying Offerというのは,メジャーリーグ全体の戦力バランスを図る趣旨で2012年度に設けられた制度であり,フリーエージェントの権利を得る選手に対し所属チームがその年のトップ125プレーヤーの給料を平均した金額で提示できる1年契約のオファーです(CBA2017-2021ArticleXXB(3))。2018年シーズンでいうと金額は17.9 millionとなり,オファーを受けた選手はメジャーリーグ全体で7人でした。選手は,全ポストシーズンが終了し5日間のQuiet Period を経た後10日以内にこのオファーを受けるかどうか決定しなければいけません。


Qualifying Offerは誰でも受けられるのでしょうか。今まで一度もQualifying Offerを受けたことがなく,その年の全シーズンに渡り当チーム40名ロスターに名を連ねていた選手にのみ Qualifying Offerを受ける権利が与えられます。例えば,2017年終了時点で当時ドジャースにに所属していたYu Darvish選手はフリーエージェントになる権利を得ていましたが,Darvish選手はトレードによりシーズン途中からドジャースでプレーしたため,ドジャースからQualifying Offerを受ける権利はありませんでした。


所属チームにとってのQualifying Offerをするメリットは何でしょうか。まずその選手を単年契約で確保できる可能性が出てくるのは言うまでもありません。

さらにもし所属チームがRevenue-sharing システムにおけるRecipientでありかつそのマーケットサイズ(CBA規定のMarket Scoreで算出)が平均を下回る場合, 対象の選手が50 million以上の金額で他のチームとサインすれば,翌年のRule 4 Draft(新人ドラフト)の1巡目の最後にSpecial Draft Choiceとして特別なドラフトの権利を得ることができます。

また,所属チームがRevenue-sharing Recipientではなく,前年のLuxury-tax salary thresholdを超えていない場合には,翌年のRule 4 DraftにおけるCompetitive Balance Round B(2巡目と3巡目の間)の最後にSpecial Draft Choiceとして特別なドラフトの権利を得ることができます。今年のドジャースはこの分類に入ります。

なお,所属チームがRevenue-sharing Recipientではなく,前年のLuxury-tax salary thresholdを超えている場合には,翌年のRule 4 Draftにおける4巡目の最後にドラフトの権利を得ることができます。


では,逆にQualifying Offer を承諾しないことによる選手にとってのディスアドバンテージはあるのでしょうか。まず当然単年契約ではあるが17.9 millionを蹴りフリーエージェントのオープンマーケットに入るわけですから,それに満たないオファーしかもらえないリスクがあります。

さらにQualifying Offerを蹴った選手と契約したチームにはペナルティが課されます。具体的には,次のRule 4 Draft におけるドラフトする権利を失うことになります。

契約チームがRevenue-sharing システムにおけるRecipientでありかつそのマーケットサイズ(Market Score)が平均を下回る場合,上から3番目のドラフト権を失い,複数のQualifying Offerを蹴った選手と契約した場合には4番目のドラフト権も失うことになります。

前年のLuxury-tax salary thresholdを超えたチームの場合,上から2および5番目のドラフト権を失うとともにInternational Bonus Poolから1million失います。もしそのチームが複数のQualifying Offerを蹴った選手と契約した場合,加えて上位3および6番目のドラフト権も失うことになります。

契約チームが右2つのカテゴリーに含まれない場合上から2番目のドラフト権を失い,International Bonus Poolから$500,000失います。複数のQualifying Offerを蹴った選手と契約した場合には3番目のドラフト権も失うことになります。

このように契約チームにペナルティが課されるためQualifying Offerを蹴った選手がフリーエージェントとして契約できる可能性は下がるが故にオファーを受けるインセンティブに繋がります。


例えば,今年ドジャースはHyun-Jin Ryu選手の他にもYasmani Grandal選手に対しQualifying Offer をしました。Grandal 選手は承諾しなかったため,もし他のチームがGrandal 選手とサインした場合にはドジャースは2019年6月のRule 4 Draft におけるCompetitive Balance Round Bでドラフトする権利を得ることになります。

Hyun-Jin Ryu選手がQualifying Offerを承諾したのにはいくつか理由がありそうです。Hyun-Jin Ryu選手(31)の今年の成績は,7-3, 1.97ERA, 89SO,82 1/3IPでありシーズン終盤とポストシーズンでの活躍が印象的です。キャリアトータルでみると2013-2018シーズンで,557IP,3.20ERA。6年契約のトータル約30 million (今年約8 million)。ここで特に注目されているのは,Hyun-Jin Ryu選手が,2013年以外の年において,今年の2ヶ月間を含め、2015年にはフルシーズンで、左肩と肘の故障で投げられなかったということです。Hyun-Jin Ryu選手としては,今年故障の懸念が払拭できないままフリーエージェントとしてオープンマーケットに出るよりは,1年の17.9 millionを受けた上で2019年怪我の心配を払拭する活躍することを条件に,次年度のマーケットでのより高額な複数年契約が期待できるとの判断だと言われています。

他方,Grandal選手(30)の今年の成績は140G,518PAと7年間のサービスタイムキャリアベストの中.241BA/.349OBP/.466SLG, 24HRの記録でした。彼としてはコンスタントに上昇してきている成績の中次年度のパフォーマンスに期待して単年の17.9 millionを受けるよりも,今年オープンマーケットで複数年契約を狙えると踏んだと言われています。

今後Grandal 選手含めQualifying Offerを蹴った選手の動向に注目が集まりそうです。

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