リビングトラストとは、その名の通り、信託を設立する「Settlors」(委託者)が、生存中に設立する、信託です。リビングトラストは、Probateを回避するためや管理能力が欠如した時のために設立されるもので、他方で財産に対するコントロールやプライバシーを維持したいという目的も達成できます。 Probateを回避したいという目的：「プロベートを回避する方法？」でも述べた通り、委託者は信託を設立することで時間的にもコスト的にも非効率なProbateを回避できます。リビングトラストを設立する目的の基本的なところはこの「Probateの回避」にあります。 抑えておくべきは、遺言を作成してもProbateを回避できないということです。この点、よく言われる「Pour-Over Will」というのは、信託財産に漏れた財産のためのバックアップの役割を果たします。
財産を信託に「fund」(移転)させることを忘れる場合があります。「Pour-Over Will」はこのような「un-funded」な財産をキャッチするために作成されるものです。この「Pour-Over Will」は遺言に過ぎず、それに規定された財産は原則Probateを経る必要がありますが、その「un-funded」な財産価値の合計が$150,000 を超えない場合には「Small Estate」として、Probateを回避できます（California Probate Code 13100）。 管理能力が欠如した時のためという目的：委託者は、自身の財産管理能力が欠如した時、すなわち、怪我、脳卒中、心臓発作などにより財産管理能力を喪失したような場合のためにどのように財産を管理処分してほしいかどうかをあらかじめ規定する場合があります。
このような規定がない場合、裁判所は誰か適当な第三者を代理人として指名しその第三者が財産を管理することになります。このプロセスは、Probateと同じく、時間的にも費用面でも非効率です。
あらかじめ信託契約書に明示することで、あなたの財産管理能力が欠如した時のために「Successor trustee」(承継受託者)を指定できます。すべての財産管理に関する事柄は、承継受託者により、あなたが回復するまでの期間、非公開に受け継がれ、管理されることになります。 財産に対するコントロールの維持という目的：委託者は、あらかじめ信託契約書に明示的に規定しておくことで、どのような時期や方法により、誰に財産ないしその収益を分配ないし承継させるかをコントロールできます。例えば、委託者が亡くなった際にお子様がまだ未成年の場合において、そのお子様が成人になるまでの間、指定の第三者がその承継受託者としてその不動産や投資金融資産を管理することも規定できます。
また例えば、委託者は現在の配偶者にその生存中においては財産を引き継いでほしいが、その配偶者が亡くなった後は、自身の子孫に財産を承継させたいとお考えになるかもしれません。
または委託者はそのお子様が将来の離婚によりその遺産を失うことを心配されるかもしれません。 プライバシーの維持という目的：Probateは公開の手続きです。Probateの記録は公開記録です。多くの人は信託と言う非公開の手段を使うことにより亡くなった後もその財産についてプライバシーを保護したいと考えるかもしれません。 リビングトラストは多くの場合「Revocable (≠Irrevocable)」（撤回可能）として設立されます。撤回可能と言う意味は、委託者がその生存中または遺言により設立後の信託に記載された規定内容を変更したり信託を終了したりできると言う意味です。なぜ通常撤回可能として設立されるのでしょうか。通常、撤回可能なものが原則で、より明確な目的がある場合にその目的を達成するために、必要な程度で撤回不可能な信託を例外的に設立すると説明されます。
インカムタックスの観点からすれば、原則、信託は税制上無視され、あなたの税務上のステータスに変更はなく新たなタックスナンバーを得る必要もありません。
他方、ある場合には撤回不可能なものを設立したい場合もあります。例えば、撤回不可能な信託は、原則、委託者とは法的に別個の主体とみなされることから、債権者からの請求から財産を保護する目的で設立される場合もあります。
また生命保険など特定の財産に限って撤回不可能な信託を設立することにより相続税を回避する目的で設立される場合もあります。
以上、リビングトラストの概略を説明しましたが、一言にリビングトラストと言ってもその内容には色々あります。重要なことは何を目的としてその信託を設立するかということになります。
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